1. 全体ロードマップ:段階的な発展

Web/A エコシステムは、単一のプロダクトではなく、プロトコルと参照実装の集合体として以下のフェーズで発展していきます。

Phase 0: 概念実証とコア仕様の確立 (現在)

  • Web/A Format: HTML5 + JSON-LD + PQC 署名のコアプロトコルの策定。
  • Maker & SSG: Markdown から Web/A 文書を生成する静的サイトジェネレーター(Sorane)の実装。
  • Web/A Form & L2E: インタラクティブなフォームと、受信者限定暗号化の参照実装。

Phase 1: 開発者・AIエージェントへのエンパワーメント

  • Folio CLI / MCP: AI エージェント(Gemini, Claude 等)が Folio 内のドキュメントを読み書き・検証するためのインターフェース提供。
  • Integration SDK: 既存の Web アプリに Web/A 署名や検証バッジを数行で組み込めるライブラリの整備。
  • 検証自動化: CI/CD パイプラインにおける HMP(人間・機械の一貫性)の自動監査ツールの提供。

Phase 2: エコシステムの統合と BYOA (Bring Your Own AI Agent)

  • Folio サービス統合: 多数の顧客を抱える事業者(アカウント・アグリゲーター等)による Folio 機能のインフラへの組み込み支援。
  • 代理応答プロトコル: Web/A Post による、所有者不在時の知的で自律的なメッセージ処理の高度化。
  • 異種分散連携: 異なる Post 実装間でのアイデンティティフェデレーションと、セキュアな証跡交換の確立。

Phase 3: 公共インフラとしての標準化と大規模展開

  • G2G/B2G 標準化: 国・自治体・民間を跨ぐ公的な証跡交換のための共通プロファイルの策定。
  • 法的証拠力の確立: 認定タイムスタンプや e-Seal との統合による、デジタル原本性の社会的な合意形成。
  • 長期検証 (LTV) インフラ: 数十年単位での署名洗替と、ブラウザによる継続的な閲覧・検証性の保証。

2. Web/A Folio: ロードマップ

Folio は、ユーザーが自らのデータを管理するための「デジタル書類鞄」です。

2.1. ローカル・ツールフェーズ (現在)

  • 形態: CLI および VSCode 拡張等。
  • 対象: 開発者、パワーユーザー。
  • フォーカス: AI エージェント(MCP 経由)によるドキュメントの整理、自動入力、真正性確認の自動化。

2.2. ライブラリ・統合フェーズ (中期)

  • 形態: モバイルアプリ用 SDK、ブラウザ拡張機能。
  • 対象: 既存サービスプロバイダー、申請 UX を改善したい事業者。
  • フォーカス: 既存のポータルアプリやウォレットアプリに Folio の「書類保存・署名」機能をプラグインとして組み込み。

2.3. 共用・広域インフラフェーズ (長期)

  • 形態: 相互運用可能な、プロバイダー非依存のドキュメント・レポジトリ。
  • 対象: 全ての個人・法人のデジタル ID 所有者。
  • フォーカス: 異なる事業者の Folio 間でドキュメントをシームレスに移動でき、Passkey と National ID (マイナンバーカード等) の紐付け(Holder Binding)によって公的効力を持つ証拠を提示可能にする。

3. 技術展望:BYOA によるオートメーションの実現

Web/A は、特定のベンダーが提供する AI を使うことを強制しません。 将来、ユーザーが「自分専用の AI エージェント」を持ち、そのエージェントがユーザーの Foldio(書類鞄)を預かり、政府や企業の Post(窓口)と対話して、あらゆる手続きを自律的に片付ける世界を目指します。

この未来において、Web/A は AI が「嘘をつかないデータ」を読み取り、自らの行為に「確かな証拠」を残すための共通のデジタル・ファブリックとなります。